Director’s NOTE
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この映画には、当初はタイトルがありませんでした。
タイトルを間違った道標として頼ってしまうのを嫌ったためです。
「撮りながら脚本を書き進めていく」というスタイルで進められた製作過程では、まさにその瞬間の自分、それを構築した過去の自分、そしてその自分が何を作っていけるのかを探す。そんな作業だと感じていました。
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そうして映画が完成に近づく中で、何か象徴的な言葉が必要だと感じ始めた時に浮かび上がったのが、以前から好きだったゴーギャンの絵とその題名でした。
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そして、現代の日本を生きる登場人物にとっては「我々」から物事を考えるより「私」から物事を考える方がより自然であり、またそうすることだけが「我々」的な思考へと地続きになっている道なんじゃないか、更に「我々」にするために必要な最初の何かを考え、「そしてあなたは・・・」と繋がっていきました。
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ゴーギャンの絵には「超越者」的な物や、言語を超えた「神秘の象徴」として白い鳥が描かれています。
白い鳥についてゴーギャンは、「奇妙な白い鳥が、言葉がいかに無力なものであるかということを物語っている」と言っていたそうです。
そういった指向は、対話の可能性と不可能性を一つのテーマとして持つこの映画と遠く通ずるものがあります。
また、この映画で主人公と対話する4人の人物たちに関して、「神か悪魔か、とにかく人間ではない何者かに見えてくる」・・・と感じていました。
それは「腐った超越者」とでも言い換えられる様な存在だと今は考えています。
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