寄稿コラム / 石川理咲子(主演女優)
「この作品は、私の人生そのものだと思った」
本当に美しい制作だったと思う。
野原で美しい蝶を見つけた子供が、無我夢中でそれを追いかけるように、ただただひたむきに、自分が思う通りのことを表現し、最善を尽くした。
そしてそれは世界中で評価された。
私はダンサーとして、 感情や環境が変化する時の、筋肉の動き、皮膚、内蔵の感覚・・・そういったものを常に注意深く感じて表現していた。
切り取られた風景の中に自分がいる・・・私にとってはこの上もない喜びだった。
周りの空間に溶け込みたいが、確かに存在したいという不思議な欲求が、存分に満たされた。
アーティストとして何かを創る時や表現する時、私はいつも、荒野をさ迷い、目の前に険しい岩山が立ちはだかっているように感じる。
荒れ地を進み続け、あの手この手を使って頂上を目指す。
そうしてある一つの何か、つまりは 一つの結論のようなものに、何とかして辿り着くのだが、それは正しいものなのか、結局のところ分からない。
なぜ追い求めるのかも分からない。
それはとても孤独な作業で、全て一人で乗り越えたと思いがちだが、実は色々なものに助けられている。耐え難い苦しみのように感じるが、それはそれで一つの物語に過ぎず、また新たな一歩を踏み出す。
この作品は、私の人生そのものだと思った。
共感できる、できない、感動する、しないは重要なことではなく、体験すること、感じることが大切なのだと思う。
せっかく生まれてきたのだから、 良いも悪いも越えて、すべての感覚や思考を刺激してあげたいと私は思っている。
皆様にもそうして頂きたい。
そうすることで、生きていることを実感し、そこから、感謝や喜びの感情がほとばしることを願っている。
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